ヴィラン連合との闘いが終わってしばらく経った頃、後輩の女の子に告白された。
 恋というものの経験がなかった僕は、彼女のその気持ちが僕への憧れから来るものだと考えて、「気持ちは嬉しいけど違うんじゃないかな」と大真面目に返事をした。
 その時の彼女の傷付いた顔は今でも覚えている。自分の恋心に応えてもらえるどころか、気持ちごと否定され、苦笑いして受け流されるのはどんなに苦しかっただろうか。

 

 酷いことをしたんだと気付いたのも、随分と経ってからだった。

 18歳の誕生日に峰田君からこっそりと渡されたアダルトビデオを、深夜に恐る恐る観ていた。
 ガタイのいい男性に組み敷かれた女性が甲高い声をあげて乱れている。首から上は絶対に映らないその男性の僧帽筋を見て、かっちゃんはもっと引き締まって盛り上がっているよな、と思った。
 
(なんで今かっちゃんが浮かぶんだ)

 女性は気持ちよさそう潤んだ目で男性を見上げている。ベッドに仰向けに寝転がり、脚を大きく開いた女性の柔らかい身体に男性が覆いかぶさって、女性を揺さぶっている。
 僕は勃起したちんちんを擦りながら、映像の端に映った男性の広背筋を見ていた。

 二人の息遣いがヘッドホン越しに脳を揺する。絶対に似ていないはずなのに、軋むベッドの音と一緒にかっちゃんの声が聞こえる気がする。

(やめないと、マズいかも)

 いつの間にか目を閉じて、夢中になってオナニーをしていた。お尻を触ってみるようになったのはそれからすぐのことだった。

 僕にとって一番身近な憧れの存在。だからといって、オナニーのたびに思い出すなんて間違ってる。
 だけどもう、始まってしまったものは止めることが出来なかった。
 
 峰田君のビデオは1回しか観ていないけど、僕はそれからずっと、オナニーの度にかっちゃんが浮かぶ。
 
 8年も経てば分かる。僕はかっちゃんが好きで、かっちゃんとえっちすることを妄想してお尻で気持ち良くなってる。
 バレてしまったら、きっと中学の頃以上に僕らの関係は破綻してしまう。だからこれは僕にとって、死んでもバレたくない最悪な秘密だった。 


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「んだそれ」

 居酒屋の騒がしい喧噪の中、僕のノートから零れ出た写真をかっちゃんが取り上げた。
 ノンアルコールビールを飲みながら、写真の端を持って汚いものでも扱うかのように眺めている。

「あー……」

 写真には歩道に立つ僕が映っていた。電柱に見切れている相澤先生と話しているようで、気の抜けた緩い顔をして笑っている。
 スーツにジャージを羽織っていて、出席簿を抱えている様子から校外学習の合間であることが分かる。

「今朝ポストに入ってたんだよね」

 僕はかっちゃんの手から写真を取り返し、ノートへと適当に挟んで鞄の中へと押し込んだ。
 
 来週に予定している演習は生徒の応用力を磨く目的があって、特別講師の大爆殺神ダイナマイトには最後まで正体を隠していて欲しかった。
 とはいえかっちゃんの個性は皆知っているから、どうやって立ちまわって貰おうか。
 居酒屋の席で持ちかけた相談は、爆破の個性を見せた瞬間に勘のいい生徒は気付いてしまうだろうというところから、閃光と時限爆弾・建造物の内部破壊を中心に動くことにしたらしいかっちゃんの話で埋まり、すごく面白かった。
 僕も来週の授業が楽しみでたまらない。夢中になって生徒の評価が疎かにならないようにしないと。

「お前それ隠し撮りじゃねーの」
「うん」

 かっちゃんは口周りについた泡を親指で拭って、おしぼりを握る。
 僕もジョッキの中を空にして、通路の奥に立つ店員さんへと手を上げて合図をした。「同じのでいい?」とかっちゃんに声をかけると、「ん」と短い返事が返ってくる。

「キモ過ぎんだろ」
「んー……」

 キモいかぁ。

 写真をポストに入れられるのは初めてじゃない。
 はじめは意味が分からなかったけど、僕もオールマイトが活躍している様子を写真に撮ってファンレターに入れたことはあったし、今はヒーローじゃない僕だけど応援してくれる人がいるのかな、なんて思うことにしてる。

「いつから」
「高校卒業してから、もうずっとだよ」

 通勤中も、休日の外出中も、じっとりとした視線を感じる。
 僕が視線の方を向くとさっと隠れてしまう後ろ姿はいつも一緒だから、きっと同一人物なんだろう。
 写真をポストに入れられる以外は特に何もされない。追いかけて話しかけようとしたこともあったけど、すぐに逃げられてしまった。
 
 どこの誰かも分からない、ただ僕を見ているだけの人。僕に何かを求めているのだと思う。

「ストーカーだろそれ」
「そんなまさか……僕男だよ」
「世の中には物好きなやつもいるんだよ」

 かっちゃんは引き攣った顔でチッと舌打ちをして、ぐつぐつと煮えたぎる石焼の麻婆豆腐をレンゲ一杯にすくって口に運んだ。
 さっきまでは機嫌が良さそうだったのに、一気に気分を害してしまったみたいだ。
 
「そうかなあ」

 運ばれてきたノンアルコールビールをすぐに掴んで、かっちゃんはごくごくと喉に流し込んでいる。
 
 かっちゃんは男同士のそういうのなんて、気持ち悪いよな。

 写真を撮った人が僕のストーカーだったとして、きっと僕がかっちゃんに向けている気持ちとさして変わらない。
 憧れがいつの間にか劣情に変わって、どうしようもない気持ちを写真に撮ることで宥めている。
 僕だってかっちゃんのニュースは逐一読んでいるし、写真だって保存してる。何も変わらない。

「送ってく」
「え?いいよ」

 会計をいつの間にか済ませてしまったかっちゃんに電子マネーを送り付けながら、店の外に出る。
 
 かっちゃんが大好きで、どうしても諦めきれなくて、沢山写真や活躍の記事を集めてる。
 かっちゃんにとって気持ち悪い行為でしかない。僕だけの秘密。
 
「そーかよ。じゃーな」
「うん」

 かっちゃんはあっさりと引いて、僕に背を向けて歩いていく。
 分かってる。かっちゃんは《物好きなやつ》なんかじゃない。女々しくて馬鹿みたいだ。

 「じゃあね」

 いい加減諦めないと。
 僕はかっちゃんの背中に向けて、僕の気持ちにサヨナラを告げた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
 

 居酒屋は僕の暮らす家の最寄り駅の傍にあった。僕はアパートへの道をとぼとぼと歩く。
 サヨナラするなら、ちゃんとしないと。
 こっそり集めた記事のスクラップファイルも、処分してしまおう。写真のデータも消してしまおう。
 ちゃんと気持ちが無くなるまで、少し距離を置かせてもらおう。特別講師を頼まなければ、僕らの今は何の繋がりもない。

「…………」

 前方からじっとりと視線が纏わりつく。公園の木の陰に身を潜ませている。
 普段はそのまま、僕が通り過ぎるのを見つめるだけ。今日もきっとそうだ。
 ちゃんと話をしてみたい。本当に僕に好意を持っているなら、気持ちには応えられないとはっきり伝えるべきだ。
 でも、また逃げられてしまうかな。相手が話したいと思っていないのに捕まえるのは酷かもしれない。

 木の傍に立ち、スマートフォンを開く。
 写真フォルダにいっぱいに並んだかっちゃんの写真を全部選択して、一括消去をはじめた。画面に砂時計が映り、ゆっくりとかっちゃんの写真が消えていく。
 木の陰から腕が伸びてきたのが視線の端に見えて、スマートフォンをポケットに入れた。木の幹へ押し付けられ、手を掴まれる。

「こんばんは」

 僕がした挨拶に返事はない。
 同世代くらいの男性が目を泳がせながら僕のことを見ていた。視線は合わず、きょろきょろと彷徨わせている。

「あっあんなや、やつの、ど、どこがいいんだ」

 強く握られた手は汗ばんでじっとりと濡れ、ガチガチに固まったように動かず、ガタガタと震えている。

「俺にして、してよ」
「落ち着いてください」

 痛む手と真っ赤になった顔から、この人は僕のことが本当に好きなんだと分かる。
 困ったな、と思う。きっとかっちゃんも、気持ちを告げられたらこんな風に困ってしまうんだろうな。

「だ、大好きなんだよ、デク……俺の、俺の、俺のものになって」
「手を離して」

 無理矢理に振りほどくことは出来るけど、きっとこの人は傷付いてしまう。
 
「話は聞きますから」
「で、デクもずっと、お、俺のこと、見ててくれた、そうだ」

 話を聞いてから、ちゃんと断ろうと思った。
 この人の気持ちはちゃんと受け止めて、その上で諦めてもらわないと。自分で捨てるのはとてもつらい。

「俺達愛し合ってる、そうだよな」
 
 だから握られた手をそのままに、僕は相手の目を見て話を聞いていた。
 僕が抵抗しないことに気付いた男性は、僕にゆっくりと視線を合わせる。
 
 「ずっと一緒にいよう。俺の事もっと愛して」

 熱烈だ。汗をたくさんかきながら、一所懸命に僕を愛してくれている。
 男性の顔が迫ってくる。キスしたいんだと分かる。応える気はないけど、どうしようか。
 これがかっちゃんだったらな。かっちゃんとキス、してみたかったな。
 
 仕方なく振り払おうとした手が、青白く光っていることに気付いた。
 光は僕の手へと移り、全身に広がっていく。
  
「離れろ!」

 みるみるうちに僕の身体が光に包まれていき、眩しくて目が開けられなくなってきた時、聞き馴染んだ声と一緒に身体に強い衝撃を受けた。


ーーーーーーーーーーーーーーーー
 

 閉じていた目を開くと、真っ白な部屋に尻もちをついていた。
 扉が3つと妙に掛布団が膨らんだ大きなベッドが1つ、傍にはサイドテーブルが置いてあるだけの真っ白な空間だ。

「なにここ……」
「閉じ込められたな」

 はぁ、とかっちゃんが大きくため息をつく。
 スタスタと部屋を歩き回り、かっちゃんは順番に扉を開いていく。

 一つ目の扉はトイレに繋がっていた。
 二つ目の扉は浴室に繋がっていた。

「……開かねぇ」
「鍵がかかってるの?」
「ちげぇ」

 三つ目の扉は開かない。
 かっちゃんは何か知っているのか、もう一度深くため息をつく。

「何話してた」
「ええ?」
「アイツと」

 壁にもたれかかりながら、かっちゃんは僕に聞く。
 どう考えてもあの人の個性だ。どうしてか分からないけど、かっちゃんを巻き込んでしまったみたいだ。

「えと……」

 異空間に閉じ込める個性なんだろうか。
 手を握って光を移した相手を閉じ込める?

「一字一句変えずにそのまま言え」
「……ず、ずっと一緒にいよう。俺の事もっと愛して」
「…………はー…………」
「ごめん……巻き込んじゃって……」

 ベッドの横にあるサイドテーブルには、コンドームとローションと膣内洗浄液が置いてある。
 
「直前に考えていたことを解除条件とする隔離系」
「え?」
「あのストーカーの個性だわ」

 かっちゃんは俯き、頭をガシガシとかきながら投げやりに話している。
 僕は地べたに座り込みながら、サイドテーブルの上のものを眺めてごくりの生唾を飲んだ。
 彼は僕にこれを使おうとしてたってことか。
 
「な、なんで知ってるの」 
「あ?……あー……最近マークしてた、犯罪者予備軍」
「犯罪者予備軍……」

 かっちゃんは壁から離れて、ベッドの上の膨らみから掛布団を剥がす。
 
「た……たまたま僕のストーカーがその人だったってこと?」
「……そういうことだな」

 ベッドの上には肌色のマネキンが寝かされていた。
 
 「い、今時のヒーローは予備軍まで調べて警備するんだ。すごいね」

 手足の無い胴と首だけのそのマネキンは、股の所に穴が開いていて、顔には僕の写真が貼り付けてある。 
 流石に直視し辛くて顔を背けると、舌打ちをしたかっちゃんがマネキンから写真をもいでぐしゃぐしゃに握り潰した。
 マネキン、というか大型オナホールはベッドから投げられ、部屋の隅に鈍い音を立てて転がる。
 
「……でも、当の本人がいないね」

 部屋にはかっちゃんと僕しか居ない。もっと愛してと言われても、これでは愛しようがない。居たとしても出来ないけれど。
 かっちゃんは怒ったように僕を睨む。気持ち悪いのは分かってるよ。でも、どうにかして出ないと困るだろ。

「俺達で条件を満たすしかねーだろ」
「そんなの無理じゃん」
「……そうだな」

 僕ら二人でもっと愛してって何だよ。僕はもうかっちゃんのことが好きだし、かっちゃんが僕に愛を向けるなんて絶対に無い。
 
「愛とか抽象的すぎんだろ。具体的な条件にしろよ」
「具体的な愛って……」
 
 二人でサイドテーブルの上に視線を向ける。ローションとコンドームと膣内洗浄液が置かれている。

「これが愛ってか……クソかよ」

 かっちゃんは何度目かも分からない溜息をつく。
 
「ごめん……」
 
 なんてことに巻き込んでしまったんだろう。
 僕は意を決してローションと膣内洗浄液を取って、トイレの扉に手をかけた。

「かっちゃんは目を閉じて、耳塞いでて」
「は?おま」

 トイレに籠り、鍵を閉める。スラックスをパンツごと脱ぎ捨てて、便座へと座り込んで前かがみになった。
 膣内洗浄液はボトルと挿入部が結合されたような形状をしていて、本来は女性が膣内を清潔に保つために使うものだそうだ。
 経血を洗い流して月経を早く終わらせる目的があったりするらしい。
 僕はその挿入部にローションを塗って、お尻にゆっくりと挿れる。

「ふ、ぅ……」
 
 慣れてるのが恥ずかしい。あの人は、僕がこれを通販で何度も買っているのを知っているのかもしれない。
 ローションだって何度も買っているものと同じ。コンドームも同じ。

 「ーーーっ……」

 奥まで挿入部を差し込んでボトルを握ると、精製水が中で噴射され、洗い流していく。

「はぁ……っ」

 一本使い切って、二本目を用意する。中に水が溢れていく感覚で腰が震えてしまう。
 こんなの絶対にバレちゃダメだ。かっちゃんはかなり嫌そうな顔をしてた。
 声を抑えるためにスーツの裾を咥える。ボトルを握ると、中がまた精製水で満たされていく。

「ぅ……」

 ビチャビチャとトイレの中に水が落ちる。
 何度も何度も洗って、置いてあった洗浄液を全部使い果たしてしまった。

 僕はかっちゃんにここを使わせようとしてる。あんなに嫌そうにしていたのに。

「…………」
 
 トイレの扉を恐る恐る開くと、かっちゃんはベッドに座り込んで項垂れていた。
 出てきた僕をちらりと見て、顔を手の平で覆ってしまう。

「かっちゃんは寝てて、目閉じてるだけでいいから」
「は?」
「僕がなんとかしてみる」
「……いや無理だろ、そこ寝ろ」
「えっ」

 かっちゃんは僕をベッドに寝かせると、お尻にそっと触れてくる。
 僕は慌てて布団を引き寄せて、顔と身体をすっぽりと覆った。

「ま、っぁッ」

 ジュルル、とローションが出される音がする。 
 ローションに濡れた指がゆっくりと中にはいってくるのが分かって、ゾクゾクして慌ててちんちんも布団で隠した。
 お尻から下だけを布団から出した状態ならかっちゃんも抵抗が少ないのかもしれない。ぐりぐりと中で動き始めて、腰が浮きそうになる。

「……痛くねーか」
「ぇ、あ、だ、大丈夫」

 かっちゃんの指が入って来てるだけでダラダラ先走りが出てきてしまってるなんて、絶対にバレちゃだめだ。
 嫌々触ってくれてるかっちゃんのためにも、僕も合わせないと。初めていれた時ってどうだったっけ、指一本ってそんなにすんなり入ったっけ……。

「指増やすぞ」
「ぅ、うん……っ」

 かっちゃんの指は太くて、二本目は流石に圧迫感がある。
 ぐりぐり中を擦ってくる指が時折気持ちいいところをかすって、これ以上気持ちよくならないように僕はちんちんの根元を握る。
 あがってこようとしていた精液がせき止められて苦しい。それから逃れるように意識がお尻に集中してしまって、布団に覆われた真っ暗な視界の中、かっちゃんの指だけが僕の頭を占めていく。

「大丈夫か」
「うん、大丈夫だから、もう挿れて」
「……まだダメだろ、切れるぞ」

 切れないよ!僕がどれだけアナル開発してきたと思ってるんだ。8年だぞ。
 かっちゃんは僕のお尻が物欲しげにひくひくしてしまっているのに気付いていないのか、何度も僕に声をかけながら指を3本に増やしてゆっくりと抜き差しをはじめる。
 
「し、しつこいっ」
「てめー俺が優しくしてやってんのに」
「いいからっ!ぁッ!挿れろよもう!」
 
 3本に増えた指はずちゅずちゅ厭らしい音を立てて、広げるように中をかき乱していく。
 ふわふわにされたお尻をさらに広げようとしているものだから、空気が入ってぶちゅぶちゅ鳴るのが恥ずかしい。

「えっちすればっ、いいだけなんだから……っ~~~切れてもいいだろ!」
「いいわけねーだろ」

 抑えきれなかった精液が手の中に零れる。布団の中に僕の熱と精液のにおいが溜まって熱くてどうにかなりそうで、僕は布団の外に出た脚を振ってマットレスをバンバンと蹴った。
 
「もう十分だから!挿れろよ!ぁッ、し、しつこいって!」
「もっと解さねーと苦しいのお前だぞ」
「いいから!」
「クソ……てめー知らねーからな」

 ゆっくりと指が抜けていく。ぽっかり閉まらなくなってしまったお尻を布団の中に隠して、サイドテーブルからコンドームを出している音を聞きながら、僕は荒くなった息をなんとか落ち着けようと深呼吸をした。
 いつもなら満足してもう終わってる。普段入れているオモチャよりも硬くて、意思を持って中を抉ってくるのは凄かった。僕が気持ち良くなってるなんてバレたら、かっちゃんにどう思われるか分からない。絶対にバレちゃダメだ。
 
「挿れるぞ」
「……うん」
「痛かったら言え」
「わかった……」
 
 腰を引かれて、お尻にかっちゃんのちんちんが触れる。それだけでお腹の奥が期待してぞくぞくしてしまう。
 苦しくならなくちゃだめだ、普通お尻に挿れられて気持ちよくなんかならない。ダメ、だめ

「っ……ぁ、!」
「大丈夫か」
「ん、っだ、だいじょぶ!大丈夫」
「痛くねーか」
「大丈夫だから!」

 熱くて硬くて、僕の気持ちいいところを反り返ったちんちんがぐりぐり押しつぶしてくる。

「動くぞ」
「う、ん」

 かっちゃんは僕を気遣ってゆっくりと腰を動かす。
 僕は布団を押し下げて、中を抉られる度におちんちんから零れてしまう精液を隠した。ベッドがギシギシと揺れ、布団越しにかっちゃんの息遣いが聞こえる。

「動きづれえ、布団取るぞ」 
「え?!だ、だめだめダメッ」

 バサッと布団を剥ぎ取られ、視界いっぱいに天井とかっちゃんが映った。

「あ、ちょっ」
「んなにイヤなら目ぇ瞑ってろ」

 慌ててびちょびちょに濡れたちんちんを両手で隠し、これ以上精液が零れないように強く握る。
 かっちゃんは布団から出た僕の腰を掴んで引き寄せ、ぐりぐりと奥までおちんちんを挿れてくる。

「ぉ゛っ…」
「はぁ……っ苦しくねーか」
「だ、大丈夫だから!こっち見ないで!」
「うっせーわ」
 
 腰を掴んで動きやすくなったのか、かっちゃんはずちゅずちゅ僕の中を突いてくる。
 ちんちんを抑えているせいで僕はかっちゃんの視線を遮ることが出来ず、流れ出てしまう涙や涎を隠すことが出来ない。

「気持ちーとこねーか」 
「き、気持ちよくなんかっ、ないから!気にしなくていい、からっ」
「チッ……おい、前俺に触らせろ」
「え、っ!だ、ダメっ!さわんないで!」
「っ、クソ……!」
 
 苛立ったように中をグチュグチュ突かれて、耐えきれずにちんちんから精液が出てしまう。
 手の中におさまりきらなくなってお腹に零れてしまい、泣きながら僕は唇を噛んで、漏れてしまいそうになる声を抑えた。

「……いずく、気持ちいーんか」
「っき、きもちよくない!」
「ほーん……」
「きもちくない!ん゛っ、ぃ゛、いからっ!はやく出せって!」

 ぎゅっとちんちんを握る。精液がせき止められていたい。苦しい。
 かっちゃんはお腹のなかを突く勢いをどんどん激しくしていって、気持ちよくて腰が震えてしまう。

「ぉ゛っん゛っ!っ、ぅ、っ、ッ!」
「いずく……っ!」
 
 ちんちんを握る力を強くする。痛い。気持ちいい。
 バレちゃう。気持ちいのがバレちゃう。絶対にダメなのに!

 「おい、ッ、握り過ぎ」
 
 かっちゃんはちんちんを締める僕の手を解こうと触れてくる。

「や、やめて!」
 
 僕の手の中はぐちゃぐちゃになったおちんちんがあって、これだけは見せるわけにはいかなかった。
 
「個性のせいだろ、我慢すんな」
「ちが、気持ちくない!ぜんぜん、ッ!」

 頑なに手を解こうとしない僕をかっちゃんは揺さぶる。奥を突かれる度に頭のてっぺんまでぞくぞくしたのが響いて、噛みしめていた口が緩んでしまう。

「っ、イキそ」
「?!っ、ィ゛っでない゛!いってないからぁっ!」
「ぁ?、あー、そうかよ?じゃあ、もーちょい、頑張るわッ」
「ぉ゛っ!ッ?ぁ゛ッ!かっちゃんの、ばか!ちろうッ!ぜ、つりんっ!」

 かっちゃんは僕の脚を抱えて奥までぐりぐりと抉ったかと思うと、ばちゅばちゅと気持ちいいところを激しく突いてくる。
 
「そこっゃ゛、めろっ!やめろって!、ッ」
「なんでだよ、いーんだろ」
「ヨくないッ!」
「気持ちよくねーの」
「気持ちく、なぃ゛っ!」
「ふーん」

 ずちゅずちゅ、かっちゃんの勢いは止まらない。僕はもう限界で、ガクガク痙攣してしまう腰が止められない。

「ぁ゛ッ!んぅぅ゛っ!だめ、ダメダメ、ッ!止まって!止まれよッ!」
 
 ムリ、むり、無理無理無理、我慢できない……!

「かっちゃ、ッ!止まって!やだ、ぁ゛っ!ぃぃ゛い゛い゛ッ!ぐ、ぅ゛っ、ッ!」

 プシャ、と僕の手の中でちんちんが噴いて、ちょろちょろとおしっこが流れ出ていく。
 僕はもうそれを止めることすら出来なくて、放心して濡れていく腰を感じていた。
 
「っ、ふ、ぅ……」
 
 いつの間にかかっちゃんは僕に覆いかぶさって、僕のことをぎゅっと抱きしめている。
 中でびくびくしていて、かっちゃんも射精出来たんだと分かった。
 
「ぅ……ごめ、ごめんなさい……」

 僕のちんちんが濡れていくのは、湿っていくシーツ越しにかっちゃんにも伝わっているんだろう。もうお終いだ、全部バレてしまった。
 
「きもいよね……ごめんね」
「は……?」
「こんなの……ごめん……っ」

 かっちゃんは身体を上げて、丸くなって身を縮める僕をあやしてくれる。
 優しくなったと思ってたけど、こんなとこまで優しくならなくていいのに。
 
「落ち着け」
「ぼく……おしり、気持ちいい。ごめんね」
「……俺が勃起しとんのはどうなるんだ」
「へ……?個性のせいでしょ」
「ちげーわ」
「じゃあなんで」 
「……」
「え」

 マットレスに押し付けて隠していた顔をかっちゃんに向けると、赤くなってそっぽを向いたかっちゃんが居心地悪そうにベッドに座っていた。
 勃起したままのちんちんが僕のお尻の傍で揺れている。
 
「……悪かった、忘れろ」
「いや、」
「忘れろっつっとんだ!」
「でも」
「また掘られてーのかてめーは!」
「い、……いいよ」
「はぁ?てめーイカれすぎだろ」
「イカれてないよ!」

 僕はだるい身体をなんとか起こして、怒るかっちゃんに向き合う。
 
「お前、自分に勃起した相手全員に股開くつもりかよ!」
「そんなわけないだろ!」
「あのストーカーにもこうしてやったんじゃねーの?!キスされそうになっとったしな!」
「避けるつもりだったよ!」
「どうだかな!俺が助けに入らんかったら今頃ケツ血まみれだったんじゃねーの!」

 かっちゃんは僕の視線から逃れるように、ベッドから離れていった。
 浴室の扉をあけて、湯舟にお湯を溜め始める。

「ああもう!初めてでちんちんはいるわけないだろ?!」
「はぁ?!」

 僕は痛む腰を耐えながら、その背中を追う。浴室の中にかっちゃんを追い込んで、ドア枠へと立ち塞がった。
 
「かっちゃんとえっちしたくてお尻自分で弄ってました!これで分かった?!」
「な、そ、え」

 かっちゃんは浴槽に手をついて中腰のまま、呆気にとられたような顔で僕を見上げてくる。
 
「ぼくかっちゃんが好き!キミは違うみたいだけど!もういいよ!忘れます!」
「おい待て」
「助けてくれてありがとうございました!お尻に気をつけます!」
「いずく」
「セックスしたのに開かないね!愛が無いから当然か!」

 僕はかっちゃんに背を向けて、部屋の中へと戻る。脱ぎ散らかした服を拾い上げ、また目の中に湧いて来た涙が零れないよう、すんと鼻をすすりながら顔を上にあげた。

「ん、む」

 腕を引かれ、視界いっぱいにかっちゃんの顔がうつる。
 ギィ、と、閉まっていた扉が開く音が部屋に響いた。

「……開いた」
「開いた、ね」

 かっちゃんは僕を腕の中に閉じ込めて、僕の目から溢れた涙に口をつける。

「ごめん。いずく……好きだ」

 もう一度、かっちゃんの口が僕の口に合わさる。ちゅ、と音をならして離れていき、かっちゃんは僕の肩に頭を乗せて、ぎゅうぎゅうと抱きしめてきた。

「僕、あの人にキスされそうになった時、これがかっちゃんだったらなって思ってたんだ」

 僕はかっちゃんの大きな背中に腕を回して、かっちゃんに負けない力でぎゅうぎゅうと抱きしめる。
 そっか。あの人が居ないこの空間では、僕の願いが条件になっていたんだ。
 
「もっと早く言えよそれ……こんなクソな空間で童貞捨てさせんな」
「あはは……」

 扉は開いちゃったけど、僕はもう少しこのままでいたくて、首筋にちゅうちゅうと吸いついてくるかっちゃんの耳元へ顔を寄せた。

「ねぇかっちゃん。ずっと一緒に居てくれる?僕のこと、もっと愛してよ」

 

おわり

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